介護の末に義父母と夫の3人を殺害したとして、殺人罪に問われた福井県敦賀市道口、会社員岸本政子被告(72)の裁判員裁判の判決が5日、福井地裁であった。河村宜信裁判長は「介護疲れを契機とし、多分に同情の余地がある」としつつ、結果の重大性を踏まえ懲役18年(求刑懲役20年)を言い渡した。
判決によると、岸本被告は2019年11月17日午前0~2時半ごろ、自宅で義母の志のぶさん(当時95)、義父の芳雄さん(同93)、夫の太喜雄さん(同70)の首をいずれもタオルで絞め、窒息死させた。
裁判では、完全責任能力を主張する検察に対し、弁護側は「心神耗弱状態」と主張。被告の責任能力の程度がおもな争点だった。
判決は、被告が16年から義父母の介護と、脳梗塞(こうそく)の診断を受けた夫の世話を1人で担う負担から適応障害を発症したと認定したが、犯行前後の行動の合理性などから「適応障害の影響は限定的」として弁護側の主張を退けた。
そのうえで「献身的な介護を続け、対処能力を超え、追い込まれた」「これまでの被害者3人の殺人の事案と比較し、明らかに軽い量刑が相当」と言及しつつも「結果の重さなどから刑事責任は非常に重い」などと理由を述べた。(大西明梨)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル