建設現場でアスベスト(石綿)を吸って中皮腫や肺がんになったとして、京都府内の元作業員と遺族ら27人が国と建材メーカー32社に計約10億円の賠償を求めた裁判の「京都訴訟」で、最高裁第一小法廷(深山(みやま)卓也裁判長)は国やメーカーの上告を退けた。二審・大阪高裁判決のうち、国とメーカー8社に約3億円の賠償を命じた部分が確定した。28日付の決定。
メーカー責任については、作業員がどの建材で被害を負ったかを特定する難しさがあった。京都訴訟の確定判決は、メーカーの販売シェア(市場占有率)や作業員の作業実績などをもとに幅広く責任を認めた。同種の訴訟は全国で24件あり、ほかの裁判に影響を与えそうだ。昨年末には「東京訴訟」で国の責任を認めて賠償を確定させる決定が出ている。
ただ、いずれの決定も国やメーカーの責任を認めた具体的な理由は書いていない。第一小法廷は今後、東京や大阪、神奈川など計4件の訴訟について一括して判決を出す見通しで、その中で判断の枠組みが示されるとみられる。
京都訴訟の原告は、国やメーカーは遅くとも1960年代には石綿の有害性を把握したのに、防じんマスクの着用指示や製品への警告表示を怠ったと主張。これによって作業員は建物の解体や石綿の吹きつけ時などに粉じんを吸い、重い健康被害を負ったと訴えた。
大阪高裁は労働者に対する国の責任やメーカー責任について認めたほか、一審・京都地裁が否定した個人事業主の「一人親方」などに対する国の責任も認定。国とメーカー10社に計3億円を払うよう命じた。今回の決定は、屋外で作業していた被災者1人については国・メーカー2社の上告を受理し、弁論を指定した。(阿部峻介)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル