奈良市の旧市街ならまちにある築100年以上の町屋にレンタルスペースができた。その名も「こたつ書店」。掘りごたつと本棚があり、啓林堂書店(大和郡山市)の選書30冊が並ぶ。リモートワークにも使え、2月末までの期間限定だ。
町屋は民泊施設「西村邸」(奈良市花園町)。民泊施設の共有部にあたる2間続き10畳半の和室を「こたつ書店」として1時間単位で借りられる。
西村邸は、杉本雄太さん(34)が祖母の家だった町屋を民泊用に改修。2019年秋にオープンし、カフェも併設する。ただ、正月過ぎの閑散期をどうするかが課題だった。
西村邸で昨年12月、啓林堂書店の経営企画室長・林田幸一さん(31)が提案したワークショップがあった。全国から集まった6人が、課題図書などの感想を1泊2日で語り合った。
杉本さんは、本棚代わりの木箱と本が持ち込まれた和室を見て、「レンタルスペースとしてじっくり本を読んでもらえるのでは」。「こたつ書店」を開くことを思いついた。
林田さんを通じて啓林堂書店に選書を依頼した。ラインアップは、1950~60年代の暮らしを描いた絵本「おばあちゃんの小さかったとき」(福音館書店)、木工作家の著書「すぐそばの工芸」(講談社)を始め、「暮らし」「工芸」などがテーマの30冊だ。
杉本さんは「特に若い世代に、気軽に西村邸に来て、古いものが残るならまちについて知り、これからのならまちや社会のことを考えてほしい」と語る。
リモートワークのために利用した奈良市の会社員八木俊行さん(35)は「こたつがあって実家みたいで落ち着く。休憩時間に本を読んだが、もっと休憩時間が長ければいいのにと思いました」と話す。
「こたつ書店」は平日(午前9時~午後5時)、1人1時間当たり500円(税別)で、1組4人まで。土日祝日(午前11時~午後5時)は開放日とし、1時間1ドリンク(税別300円から)オーダー。土日祝日も予約可能。予約がある場合は、カフェスペースのみ開放する。問い合わせは西村邸へメール(info@nishimuratei.com)で。(米田千佐子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル