資金繰りに窮した男に誘われ、空き巣の実行役になった元従業員の男は、侵入先で鉢合わせした住人を殺害した。経済的な動機はなかったのに、リスクを一手に引き受けた。なぜ、犯行に及んだのか。元従業員は法廷で「断れない性格」だったと繰り返した。
2019年11月14日、愛知県岡崎市のマンションで住人の男性(当時49)が殺害され、財布や車などが奪われた。検察は、土木建築業などを営んでいた男(38)を強盗致死と住居侵入の罪で、元従業員の男(42)を強盗殺人と住居侵入の罪でそれぞれ起訴した。
今年2~3月、名古屋地裁岡崎支部で2人の裁判員裁判が開かれた。黒い服を羽織った男と、一回り体格のある白いワイシャツを着た元従業員の男。2人は、互いに目を合わせることはほとんどなかった。
検察側の冒頭陳述などによると、土木建築業や特殊清掃業を営んでいた男は、19年の秋ごろから事業の資金繰りに窮するようになり、約650万円の借金を負っていた。金を工面するために相談した知人らを通じ、ある高利貸の男性が自宅マンションに1千万円近いお金を置いているという情報を得た。
借金返済のため、男はこのマンションに侵入して男性の金を盗む計画を立てた。そこで頭に浮かんだのが、ゲームやマンガを介して20年近い「友人関係」にある従業員の男だった。
「入れるかな」「何か手はある?」。防犯設備の解除の仕方や侵入方法について、さりげなく相談を繰り返した。
被告人質問で、検察側は男に「なぜ誘ったのか」と尋ねた。
男「頼れる友人だったから」
検察側「頼れる…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル