狭山丘陵の里山保全に取り組む公益財団法人「トトロのふるさと基金」(事務局・埼玉県所沢市)が昨年、設立30周年を迎えた。その取り組みは、市民らの寄付金で雑木林などの土地を買い取って保全管理し、環境調査を積み重ねる「ナショナル・トラスト活動」と呼ばれる。事務局長の北浦恵美さん(55)に、活動の現状と展望を聞いた。
――これまでに取得した「トトロの森」は55カ所にもなります
個人や企業による寄付金の総額は9億5千万円を超えました。「本当に多くの人たちに支えられているのだな」と実感します。買い取った雑木林などの土地は、所沢市を中心に入間市や東京都の東村山、東大和両市などで計約10・4ヘクタール。ここ10年ほどは基金の活動への理解が深まり、「土地を買い取ってほしい」という地権者の方々や土地の無償寄付も増えています。
――一方で、乱開発につながる動きはなくなりません
東京と埼玉にまたがる狭山丘陵は約3千ヘクタールと広大で、都心から近いために開発の手が伸びやすい。近年は東京五輪に向けての土地買収や開発も増えました。森や小川、湿地など里山の景観が失われ、そこに息づいていた生きものたちが姿を消すといった例も後を絶ちません。だからこそ息の長い取り組みを通じて、自然環境を守っていく必要があるのです。
――ナショナル・トラストを進める意義は何ですか
ある開発計画を反対運動でストップさせることができたとしても、次にまたどんな計画が出てくるか分かりません。私たちが土地の所有権を持てば、乱開発から守ることができます。地権者にとって土地は「財産」ですが、思い入れを持って大切に手入れしてきた方も多い。ナショナル・トラストは、地権者の方々と協力しながら「恒久的」に環境を保全していくための重要な手段なのです。
――取得地の保全管理は誰が担っているのですか
ボランティアの方々を中心に、伐採や下草刈り、落ち葉掃きなどの作業を定期的に実施しています。職員も作業にあたり、現在16ある「協力団体」や地元の方々の協力も欠かせません。今年度の会員約1200人のうち、登録制のボランティアとして活動するのは約150人。森の管理方針を決めるため、職員と一緒に動植物の確認調査をしてもらうこともあります。
――「これからの30年」に向けた展望と課題を教えてください
取得した「トトロの森」は、狭山丘陵全体から見ればごくわずかな面積にすぎません。今後も取得する森をさらに増やし、森と人とが共存するための管理を続けていくことが重要になります。ただ、こうした活動は資金面の負担が大きいのも事実。「恒久的」に森を保全していく仕組みづくりと、ボランティアなどの「担い手」をどう育てていくかは今後、ますます大きな課題となりそうです。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル