沖縄の森林に生息するゴキブリの一種が、オスとメスで互いの羽を食べ合う生態を持つことを、九州大の大学院生、大崎遥花さんと粕谷英一准教授が発見した。生物が異性の体を食べる行動はカマキリなどで知られていたが、両性が食べ合う行動はこれまで確認されていなかったという。
羽を食べ合うのは、沖縄や奄美大島に生息する体長約3~4センチのリュウキュウクチキゴキブリ。クロゴキブリなど住宅に出るものとは異なり、一生の多くの時間を朽ち木の中で、木を食べながら過ごす。
例年、5~6月の繁殖期に若い成虫が飛行して相手を探すが、朽ち木の中で見つかる成虫は羽がない状態がほとんどで、詳しい理由は分かっていなかった。
大崎さんは沖縄本島北部の国頭(くにがみ)村で幼虫のうちに採集し、羽のある成虫に育った若いつがい24組を観察。うち12組は互いの体をなめ合いながら、1~3日かけて互いの羽の根元まで食べ尽くした。9組は部分的に食べ、3組は全く食べなかった。異性の体を食べる行動はカマキリのメスがオスを食べる「性的共食い」や、キリギリスの一種で、オスが自分の羽をメスに食べさせている間に交配する「婚姻贈呈」などの例が知られているが、両性が食べ合う行動は初めて確認されたという。
リュウキュウクチキゴキブリのつがいは数年間の生涯にわたりペアを変えず、繰り返し子育てをする「厳密な一夫一妻」と考えられているという。大崎さんは「木の中で動きやすいよう互いに羽を取ったり、浮気をさせないためにもいだりしているのかもしれない。交尾や子育てにどう関わるかも含めて明らかにしていきたい」と話している。
研究成果は1月、行動生態学の専門誌「エソロジー」に掲載された。(竹野内崇宏)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル