亡き人からの手紙、大切な人に届けます――。真宗大谷派の寺がはじめた「手紙寺」が、コロナ禍で人々を引きつけている。故人から生前に寺が手紙を預かり、死後に受け取った遺族らは返事を書く。この取り組みを通して、心の落ち着きを取り戻す人もいる。
ラストレターの預かり料は1万3200円。亡くなった人への手紙の焚き上げは無料。宛先は「〒274・0082 千葉県船橋市大神保町1306、手紙寺お焚き上げ」。問い合わせは手紙寺(03・5879・4501)へ。
手紙だから書けたことも
3月中旬、千葉県船橋市の船橋昭和浄苑内にある「手紙寺 船橋」。同県白井市の石塚紀子(のりこ)さん(51)は、亡き夫の裕隆(ひろたか)さん(享年55)からの「ラストレター」を受け取った。
裕隆さんが膵臓(すいぞう)がんと診断されたのは2018年6月。すでに末期だった。残された時間をどう過ごそうかと思案し、2人で手紙寺を見に行った。「亡くなったら開ける」と約束し、お互いに手紙を書いた。今年1月、裕隆さんは逝った。
納骨が終わり、紀子さんは寺院内のラウンジ「手紙処(てがみどころ)」に入った。落ち着いて手紙を書くために設けられたスペースで、裕隆さんが眠る永代供養墓がよく見える。約80平方メートルの部屋を、壁の木々のにおいが包む。
手紙の封を開けると、小ぶりで控えめな文字が見えた。「あ、裕隆さんだ」。笑みがこぼれた。
拡大する手紙寺で、亡き夫・裕隆さんからの「ラストレター」を読む石塚紀子さん=2021年3月14日、千葉県船橋市大神保町、福冨旅史撮影
《出会ったときから、感じるものがありました》
そんな風に思ってくれていたんだ。裕隆さんの本音が初めて聞けた。
《子どもができなかったこと、申し訳ない》
謝る必要はないのに。裕隆さん…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル