京都・祇園で火災に見舞われた1軒の老舗お茶屋に、再び明かりがともった。新型コロナウイルス禍の中、再建したのは80歳のおかみ。その思いは、遠く離れた地で同じ境遇のもう1人のおかみに紡がれていった。(佐藤秀男)
「装いは多少変(かわ)りましたが、今まで通り変らぬ赤いポストと松の緑を目印にお越し下さい」。今年1月、お茶屋「吉(よし)うた」(京都市東山区)のおかみ、高安美三子(みみこ)さん(80)はなじみ客に営業再開を知らせる、こんな手紙を送った。
祇園のメインストリート、花見小路通を南へ進むと、手紙の通り赤くて丸みのある郵便ポストが。そばには通りに向け、枝を伸ばすマツも。ここが再建された、吉うただ。
お茶屋は、芸妓(げいこ)や舞妓(まいこ)による舞を楽しんだり、お座敷遊びに興じたりする「一見(いちげん)さんお断り」の社交場。創業100年を超す吉うたは、昭和初期に作家の長田(ながた)幹彦が滞在中、舞妓の心情や京都の四季を織り込んだ歌舞曲「祇園小唄」を作詞したことでも知られる。
玄関を抜けると、2階に広さ10畳と6畳の座敷。びょうぶを背に芸舞妓が舞を披露する。1階には客10人ほどが座れるL字形のカウンター。舞妓や芸妓を経て24歳で4代目おかみになった高安さんが、記憶を頼りに再現した。
「前と同じでホッとする」
吉うたが全焼したのは2019…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル