石川和彦
鳥取県内の路線バスのルートをつなぎ、ダイヤの一部を統合すれば県を横断する新路線「鳥取・倉吉・米子線」ができる。停留所の数は日本最多の213を数え、観光資源になる――。そんな考察結果を県立倉吉東高校3年の亀井俊佑さん(17)がまとめた。全国規模の課題研究の発表・審査会で最優秀のグランプリに輝いた。
この考察結果は、2年時に全学年で取り組んだ探究学習の授業の成果だ。亀井さんは県内の地域交通を研究テーマに選んだ。高速道路を使わない路線バスとしては日本一長い奈良交通(奈良市)の「八木新宮特急バス」(約170キロ、所要約6時間半、停留所数167)に着目。鳥取、倉吉、米子を結ぶ「鳥取県横断長距離路線バス」がつくれないかと考えた。
現在のバス路線は東、中、西部の三つの地区ごとに完結していて、空白地帯もある。亀井さんはバス事業者2社の倉吉営業所に行って路線バスの乗客数などを尋ねたり、バスの運行に関する法律や運転手の労働条件を調べたりした。実際の運行状況を現地調査し、利用者の声も拾った。
運転手不足が問題になっていることなどから、単純な新路線開設は実現可能性が低いと判断。既存のダイヤを組み合わせることで無理なく運行できないか分析した。その結果、平日なら1日1往復は東部から中部、中部から西部に入る際の待ち時間がほとんどなく運行できることがわかった。所要時間は片道で約4時間40分(30分の休憩を含む)になった。
3日間乗り放題の乗車券(1800円)を買えば、路線バスだけで県内のほとんどの観光地をめぐることができる。停留所数が日本一になれば「鳥取・倉吉・米子線」が観光資源になることにも気づいた。亀井さんによると現在の日本一は「北海道沿岸バスの169カ所の路線」という。
こうした考察結果を「その名は日本一停留所の多い路線バス」としてまとめた。同校はほかの優秀作5件とともに一般社団法人「Glocal Academy」(鹿児島市)が主催する第6回高校生国際シンポジウムに応募。3月下旬にオンラインで実施された同シンポジウムで発表した。
探究部主任として指導した竹中孝浩さん(現教頭)によると、審査員からは地域の課題に自分事として取り組んだことや見逃しがちな身近な問題を取り上げた着眼点が評価され、提言内容は実現可能性と費用対効果が高い、と判断された。
亀井さんは「最後まで突き詰めて考えることは重要だとわかった。実際に走らせるには、さらに細かなダイヤ設定が必要で、収益面での問題点が残るが、こういう議論が地域交通の利便性向上や地域の活性化のきっかけになればうれしい」と話している。(石川和彦)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル