1枚のカレンダーが群馬県内で存在感を放っている。値段は100円(税込み)。今年分は2万枚以上刷られたが、すぐに在庫がなくなるほどの盛況ぶりだ。このカレンダー、思わぬ「効能」が人気の秘密という。
前橋市大手町2丁目にある「やきとり居酒屋明星」。まもなく開店30年になる老舗の壁に、そのカレンダーは貼ってあった。白バイに乗った2人の警察官。背景には、雪化粧の壮大な浅間山。「群馬」の「警察」であることが一目で分かるようにと、今年は初めて合成写真にした。
「お客さんとして来る警察官が毎年持ってきてくれる。これが貼ってあると、警察官が寄っている、と思われるのか、うちでは変なトラブルは全然ない」と店主の木原義隆さん(78)は語る。
カレンダーをつくっているのは県警の関係団体「県防犯協会」だ。毎年2万数千枚を刷る。
カレンダーには「群馬県警察」「群馬県防犯協会」「群馬県交通安全協会」の3団体が名を連ねる。県警のマスコットキャラクター「上州くん」「みやまちゃん」も登場し、県防犯協会のスローガン「みんなでつくろう 安心の街」の言葉を掲げる。
「合成しないでアピールしたい」
協会によると、カレンダーは運送業界や金融機関などの民間のほか、各警察署が数百枚単位で購入してきた。
ただ最近は、個人で買い求める人も増えている。購入者の中には「一人暮らしの親に玄関に貼ってもらう」「店の外から見えるところに貼りたい」という声があるという。
「特殊詐欺などで自宅に来る犯罪者を退散させる効果を狙ってのことでは」と協会の久保雅則・事務局次長は話す。昨年11月に発行した広報「防犯ぐんま」でも「詐欺や押し売りの対策になるなど、防犯に役立っているとの声が多く寄せられた」と紹介している。
今年のカレンダーの在庫はなく、増刷する予定もないという。協会ではすでに来年分の図柄を検討している。「できるだけ合成しないで群馬の防犯をアピールできる写真にしたい」と久保次長は話している。
カレンダーの注文は毎年10月ごろから受け付ける。問い合わせは県防犯協会(027・221・2230)。(寺沢尚晃)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル