新型コロナウイルスの影響で、今年も祭りの中止が相次いでいる。担い手不足に悩んでいた地域では、存続の危機を迎えた祭りもある。伝承するために全面中止にはせず、一部の祭事を開く動きもみられる。
「結局、前の大祭(たいさい)が最後になってしまった。こんなご時世ではやむを得ん」。三重県志摩市の的矢湾に浮かぶ渡鹿野(わたかの)島。渡鹿野区の区長、茶呑潤造(ちゃのみじゅんぞう)さん(71)は前回2014年7月にあった渡鹿野天王祭(てんのうさい)の大祭の画像を紹介しながら、ため息をついた。今年の大祭に続き、次回7年後以降も大祭の開催を見送る。
島では毎年7月に開く例祭があり、7年に1度、大祭も開いていた。例祭では、八重垣神社のご神体をみこしに移し、各家を回る。大祭の年は、台船の上にも8メートル四方のやぐらを組み、約90個の提灯(ちょうちん)で飾り、みこしを載せて島の周囲をぐるりと回る祭事が加わる。
江戸時代後期にはすでに執り行われていたとされ、使われるみこしには「文政二(1819)年」との墨書がある。市の無形民俗文化財に指定されている。
提灯を各所に飾ったり、みこしを鎮座させるやぐらを組んだりする作業があり、毎年ある例祭でも50~60人を必要とする。船を使う大祭になると、さらに人手が要る。
島の住民はピーク時の1955(昭和30)年に約580人いたが、今は約170人。うち30~60代の男性は40人ほどしかいない。近年は島外からのボランティアにも参加してもらっていた。
昨年の例祭はコロナ禍で中止…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル