法相まで務めた河井克行被告に実刑判決が下された。過去最大規模の選挙買収の背景には、地元の反発を顧みずに妻の案里氏を擁立した政権主導の選挙構図があった。厳しい選挙戦を余儀なくされた被告が買収したのは、計20万票を得票する力を持つ地元議員たちだった。
判決を受け、自民党幹部からは「猛省を促したい」(佐藤勉総務会長)などと克行被告を突き放す発言が相次いだ。二階俊博幹事長は報道各社が要請した対面での取材に応じず、「政治の信頼を揺るがせるような事態を深刻に受け止めるとともに、引き続き党全体の規律の徹底と信頼回復に努めていく」とのコメントを発表しただけだった。
人ごとのような姿勢に終始しているのは、2019年参院選広島選挙区(改選数2)をめぐる事件の背景に、安倍晋三前首相ら政権主導による異例の選挙構図があるためだ。
当時、自民党広島県連は現職の溝手顕正・元国家公安委員長の支援を決めていた。溝手氏は、広島選出の岸田文雄・前政調会長が率いる岸田派(宏池会)の重鎮。岸田派が主流を占める県連は、溝手氏を落とすわけにはいかなかった。
ところが、党本部は2人目の公認候補として、克行被告の妻で新顔の案里氏=公職選挙法違反(買収)の罪で有罪確定=を擁立。これを主導したのが当時の安倍首相と菅義偉官房長官だった。この決定に県連は猛反発。党本部と県連の分裂選挙に至った。
200万円を受け取った県議は「他人の裁判なので」と取材に答えるのみだった。記事の中盤では、現金が配られた地元広島県議の反応や背景を、記事終盤では総選挙を控える菅政権の懸念を紹介します。
溝手氏はかつて、安倍氏を「…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル