陸上男子100メートルで9秒95の日本新記録を出した山県亮太さん(29)は、広島カープが大好きな野球少年だった。小学4年のとき、ある夫妻との出会いから陸上の道へ。24日からは3大会連続の五輪出場をかけた日本選手権が控えている。夫妻の夢も重なる。
教え子には為末大さんも
2002年春、広島市で開かれた陸上大会で、夫妻は当時小学4年の山県さんの走りを初めて見た。100メートルに出場し、2位に大差をつけて優勝。上半身が上下左右に揺れず、もももしっかり上がっていた。「こんな子はめったにおらん」。前だけを見て、さっそうと走る姿に目を奪われた。
夫妻は、山県さんの地元・広島市で陸上クラブ「広島ジュニアオリンピアクラブ」の顧問を務める日山君代さん(86)と夫の正光さん(故人)。1985年、クラブを立ち上げた。高校教員で陸上部の顧問だった正光さんが会長、中学校の体育教員だった日山さんが副会長を長く務めた。「夢はでっかくオリンピア」を合言葉に、約30年にわたって子どもたちを指導。五輪に3度出場した元陸上選手の為末大さん(43)も「卒業生」だ。
「うちのクラブに入ってもらわないけん」。驚きの走りを目の当たりにした日山さん夫妻は、応援に来ていた山県さんの両親と祖父母を見つけ、名刺を差し出した。ただ、当時の山県さんは広島カープにあこがれる野球少年。「うちの亮太は少年野球に入っているんです」と言われた。
それでも、「練習に来てほしい」と熱心に誘うと、約1週間後、山県さんは父親に連れられてやってきた。当初は少年野球チームと掛け持ちしていたが、間もなく山県さんは「僕、かけっこをする」と宣言。陸上に専念するようになった。
山県少年がいつごろ、どんな風にタイムを縮めていったのか。記事の後半で紹介します。
「腰に付けた大根をすぱっと…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル