九州電力玄海原発が立地する佐賀県玄海町が毎年、カレンダーを発行して町内の全世帯に配っている。月ごとに原発やエネルギーの話題をコラム形式で紹介しているが、町民の一部からは「東京電力福島第一原発の事故の教訓が生かされていない」と反発の声も出ている。
町防災安全課によると、2021年のカレンダーは20年度の事業でつくった。B3判の壁掛け型が2500部、A5判の卓上型が2700部。約2千の町内全世帯と、商工団体や農協、漁協などに配った。
印刷費用の154万円は、経済産業省資源エネルギー庁所管の「広報・調査等交付金」を充てた。目的は「原子力やエネルギーに関する正しい知識の普及と理解促進」。遅くとも1994年から毎年発行しているという。
たまねぎじいやが「原子力はCO2排出量が少ないんじゃな」
今年6月の話題は、使用済み核燃料の保管プール内での間隔を詰める「リラッキング」。町特産のタマネギにちなんだゆるキャラ「たまねぎじいや」のイラストが、吹き出しの中で「安全性はこれまで同様確保されるのじゃ」と語っている。これについて、市民団体「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」は「プールを形作るコンクリートや金属の耐久性は大丈夫か」と疑問を示す。
8月は、使用済み核燃料を専用容器に入れて空気の循環で冷やす「乾式貯蔵」。別のキャラクターが「この保管方法は、燃料を冷やすのに水や電気を必要としないのよ」と説明している。同会は「最終処分の方法も決まっていないのに、保管方法の利点だけを強調するのはおかしい。一刻も早く取り除いてほしい」と懸念する。
11月は「各種電源別のライフサイクルCO2排出量」として、石炭火力や石油火力、太陽光、風力などと原子力を比べたグラフを掲載し、たまねぎじいやが「原子力はCO2排出量が少ないんじゃな」と解説している。
「安全神話の受け売り」批判も
こうした内容について、町民の男性は「福島の事故から、何も学んでいない。政府や電力会社の『安全神話』の受け売りだ」と話す。別の男性は「原子力のいい点ばかり言っていて、信用できない。国がいちばん表に出しているCO2の部分も強調しすぎではないか」と語る。
コラムの各種データの出典は「資源エネルギー庁」「環境省」などと明記してあるが、6月のリラッキング、8月の「乾式貯蔵施設の概要」、12月の「廃止措置計画の概要」には出典が記されていない。町によると九電から画像などの資料をもらい、防災安全課員が文言を考えたという。
原発立地自治体の中には、同…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル