家族が集まってたわいない話をする、お茶の間。日本から消えゆくその空間を、インターネットの世界につくりだしてはどうかと、金沢市のグラフィックデザイナーが考えた。匿名で参加できるけれど、誹謗(ひぼう)中傷ではなく、世間話をしたり愚痴をこぼしたり。ほっと一息つけるネットの居場所にしたい、という。
設計の仕事をしている白山市の山田亜紀子さん(41)は、6月のある金曜の夜、「バーチャルファミリーお茶の間」に参加した。
山田さんは「娘」のアイコンを選んだ。「周りに気を使わないで王様のように振る舞う人がいて困る」と愚痴を入力。すると、「猫」や「お母さん」が反応した。「自分は我慢する」「はいはいって言っておく」。それぞれの対処法を教えてくれた。
猫やお母さんが誰なのか、何歳なのか、山田さんは知らない。それでも、「自分の中のもやっとしたものが解消できて、ちょっとリフレッシュできた」。
お茶の間では一度に8人までチャットできる。用意されているのは、おじいさん、おばあさん、お母さん、お父さん、娘、息子、犬、猫。一度に入力できるのは25文字まで。お茶の間は30分で閉じられる。
「複数の目があるから不快なことを言う人も少ないと思うし、実際の自分ではない『役』を選ぶことで本音も書ける。会話が弾むときばかりではないけれど、一期一会で面白い」。山田さんはそう感じたという。
イベント企画などを手がける白山市の伊藤昌輝(まさてる)さん(48)は、仕事仲間と時間を決めて参加する。「卵焼きに何をかけるか。マヨネーズか、しょうゆか」といった話題で盛り上がった。一方、知らない人とは会話が弾まなかったという。
お茶の間をつくったのはデザイ…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル