静岡県熱海市伊豆山地区で、土石流のため通行できなくなっていた国道135号は29日、通行止めが全面解除され、神奈川県湯河原町との県境を越える車両の通行が可能になった。市は同日から被災者を対象とする生活再建に向けた説明会も開始。3日間かけて市内5会場で実施を予定し、復興に向けた一歩が動き出している。
3日に発生した土石流で大量の土砂が流れ込んだ国道135号の逢初(あいぞめ)橋。午後3時、「規制を解除します」と国の担当者が声を上げると、通行止めの看板が外され、数台の車が湯河原方向へ。橋のたもとでは今も残るがれきをショベルカーが撤去していたが、国道を介した住民や物資の移動が可能になり、生活再建への「新しい段階」(斉藤栄市長)に進んだ。
「これで熱海駅前に行きやすくなる」。近くに住む望月幸男さん(71)は規制解除を喜んだ。自家用車がなく、土石流発生前は交通手段にバスをよく利用していた。「高齢で足腰が弱い人ほどバスを頼りにしている。通行止めの解除は住民にとってありがたい」と話した。
東海バスは30日、国道135号を通る熱海駅―湯河原駅の運行を再開する。熱海駅から熱海ビーチライン経由で伊豆山の七尾団地まで33分だった別路線の所要時間は、逢初橋経由で14分に短縮される。
一方で、国道の代替路として無料開放されていた熱海ビーチラインは30日午前0時から有料道路に戻る。
伊豆山から市内のホテルへの避難者は29日正午時点で331人だが、熱海市は交通の利便性の回復で帰宅する避難者が増えることを期待している。
また、熱海市は29日から被災者の生活再建説明会を始めた。同日、伊豆山地区の仲道公民館には住民約50人が集まった。斉藤市長や市の職員が住宅の確保やライフラインの復旧状況などを説明し、冒頭以外は非公開で行われた。
参加した自営業の熊倉光彦さん(55)は、住民から水道などのライフラインの復旧に関する質問が多かったとし、「自分は被害は少なかったので、まずは家がなくなってしまった人の支援を優先的に進めてほしい」と話した。
説明会の終了後、斉藤栄市長は取材に、「被災した方も個々人で境遇がそれぞれ違い、一概に何の支援が重要とは言いにくい。一人1人に丁寧に対応していく必要があると痛感した」と述べた。
逢初川右岸の岸谷地区の説明会には、住民約30人が出席し、「伊豆山小学校でいつ授業を再開できるのか」「土石流が覆った市道はいつ開通するのか」といった質問が出たが、市はいずれも再開の時期を示せなかったという。(植松敬、村野英一)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル