川口敦子
8日夜の東京五輪の閉会式。中盤、日本各地の伝統の踊りが紹介されたあと、国立競技場(東京都新宿区)に盆踊りの定番「東京音頭」のメロディーが響きわたった。
♪ 花の都の 花の都の真ん中で サテ ヤットナ ソレヨイヨイヨイ
歌い手を囲んで円になって踊る浴衣姿の人たちの動きをまねて、リズムをとる各国の選手たちの姿がテレビに映し出された。
「まさか本当に東京音頭が流れるとは。油断していました。前会長の夢がかなってうれしい」
そう話すのは、日比谷公園(千代田区)の園内にあるレストラン「日比谷松本楼」の広報を務める寺内晋(すすむ)さん(41)だ。例年約4万人が訪れる夏の恒例行事「日比谷公園大盆踊り大会」の事務局長を務める。
松本楼の小坂哲瑯・前会長は、東京五輪の閉会式に盆踊りを採り入れる提案をしていた。その場ですぐ踊りの輪に加わることができ、一体感を得られるのが盆踊りの魅力。「いつか東京五輪で盆踊りをやりたい」。企画書を作り、自民党の国会議員らを回る熱の入れようだったが、2018年に86歳で亡くなった。
小坂さんの願いが通じたかのような閉会式での東京音頭の風景。寺内さんは社長からの連絡で知った。仕事帰りで見逃したが、9日にユーチューブで見た。
寺内さんは言う。「メダルに喜び、感染者増加に不安になった五輪の17日間だった。盆踊り大会はコロナ禍で2年連続で開催できていないが、来年こそ絶対開きたい」(川口敦子)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル