相次ぐ豪雨災害を受け、国は「流域治水」にかじを切った。川だけでなく、まわりの土地全体で水害に備える手法だ。河川工学者の島谷幸宏さん(66)は、これは国のあり方を変えるかもしれないと言う。目指すのは、豊かさが続いていく地域づくり。どうつながるのか。(編集委員・佐々木英輔)
国土の改変の影響が現れた
これまでの治水は、堤防やダムなど川そのものへの対策が中心だった。しかし、それだけでは水害を防ぎきれないと国土交通省が昨年打ち出したのが「流域治水への転換」。水が流れ込んでくる範囲を見渡し、様々な対策を組み合わせる考え方だ。
雨水をためたり地面にしみ込ませたりする場所を増やし、森林や農地の機能も生かす。遊水地に水を逃がし、危ない場所を避けて住むよう促す。全国各地の水系ごとにプロジェクトが始まり、関連法も成立した。
「今は水を集めすぎているんです」と島谷さんは言う。都市化で地面が覆われ、降った雨を速やかに流すよう水路が整備されてきた。このため下流の水位が一気に上がってしまう。こうした国土の改変の影響が、激しい雨が増えたことで目に見えるようになってきたのだという。
「気候変動と人口減の時代。堤防とダムだけでは守れず、維持管理も大変です。健全な水循環を取り戻し、高度成長期型の国土から持続的な形にしていかなければなりません」
ゆっくり流し、流量のピーク…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル