4件の市民襲撃事件で殺人罪などに問われた特定危険指定暴力団・工藤会(北九州市)のトップで総裁の野村悟被告(74)と、ナンバー2で会長の田上不美夫被告(65)に対する判決公判が24日午前、福岡地裁で始まった。足立勉裁判長は主文の言い渡しを後回しとし、判決理由から読み上げを始めた。厳刑となることが予想される。
求刑は、野村被告に死刑、田上被告には無期懲役と罰金2千万円。福岡地検によると、指定暴力団トップに死刑が求刑されたのは初めてとみられる。
公判は午前10時に開廷。午後にかけて、各事件の事実認定や量刑の理由などを言い渡していく見通し。
起訴状などによると、両被告は、1998年に北九州市で元漁協組合長の男性(当時70)が射殺された事件や、2012~14年に北九州市と福岡市で元福岡県警警部ら3人が襲撃されけがをした3事件について、実行犯の工藤会系組員らに犯行を指示したとされ、殺人と組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)、銃刀法違反の罪に問われた。
両被告が指示したことを裏付ける明確な証拠がない中、暴力団の組織性を根拠にトップらの指揮命令を認めるかが最大の争点だった。
検察側は、いずれの事件も工藤会による組織的な犯行と指摘。野村被告は首謀者、田上被告はそれに次ぐ立場で、組織の指揮命令系統を利用して犯行に及んだと主張した。直接的な指示を示す証拠が無い中、傘下組長らの「(野村被告は)神」といった証言を重ねることで工藤会が「上意下達で動く組織」であったことの立証をめざし、重要な意思決定が両被告の了解なしに行われることはあり得なかったと訴えた。
両被告はともに無罪を主張。弁護側は、「総裁」は名誉職的な立場で指揮権限はないなどと反論し、「事件を起こせば組織に重大な影響を及ぼすことがわかっていながら、両被告があえて実行を指示するわけがない」と関与を全面的に否定した。検察の主張についても「間接証拠の評価が極めて恣意(しい)的。強引に両被告の有罪と結びつけるため、独善的な『推認』に終始している」などと徹底的に批判した。
両被告の公判は19年10月~21年3月の計62回開かれ、元組員や県警の捜査員ら延べ91人もの証人が法廷に立った。
工藤会は、北九州市を地盤に首都圏にも傘下組織を持つ暴力団。市民への襲撃など凶悪犯罪を繰り返したことから、12年から暴力団対策法に基づく「特定危険指定暴力団」に全国で唯一指定されている。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル