仙道洸
埼玉県新座市の渡辺大祐さん(32)は週3回ほど、足が不自由な市内の80代男性宅に通う。訪問マッサージの仕事のためだ。
7月16日、男性は自宅で焦った様子で電話していた。電話を終えると「待っている人がいるので近くのコンビニまで送ってくれないか」。理由を聞いても話そうとしなかった。
不審に思いつつ付いて行くと、茶髪の黒いTシャツを着た若い見た目の男がいた。
渡辺さんの存在に気づくと男は目をそらした。男性は電話で聞いていた男の名前を呼んだが、男は応じずに足早に立ち去った。
渡辺さんが男性に改めて聞くと、「100万円用意してほしいと言われた」。電話の相手は「孫の友人」で、「あなたの孫が借金で困っている」と言われたのだという。
家に戻ると男性はまた電話をし始めた。渡辺さんが求めても、なかなか電話を代わってもらえない。「いっしょにいるのは誰?」と聞かれているようだった。「マッサージ師はいつ帰る?」と言われていたところで男性から電話を受け取った。「後でかけ直します」と言った相手に渡辺さんが電話番号を尋ねると、一方的に電話を切られた。渡辺さんは110番通報した。
郵便局 閉まる直前に駆け込んできた女性
「100万円をすぐにおろしたい」。新座栄郵便局には7月8日、窓口が閉まる直前に70代の女性が駆け込んできた。
局長の荒沢喜久枝さん(54)が用途を確認すると「息子が会社の書類を間違って送ってしまった」ため現金がすぐに必要だという。「早く息子に渡してあげないと」と焦る女性を冷静になだめ、局員に警察への通報を指示して女性を別室に誘導。15分ほどすると警察官が駆けつけ、女性も詐欺だと気づいたという。
渡辺さんと荒沢さんには新座署から感謝状が贈られた。新井康弘署長は「高い防犯意識を持って対応いただき大変ありがたい」と話した。渡辺さんは「在宅サービスは地域の見守りも担っているので日常的に防犯意識があった。詐欺被害が身近だと感じてほしい」。荒沢さんは「こちらが焦ってはだめ。なるべく時間をかけて話すよう意識した」と振り返った。(仙道洸)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル