公衆浴場や温泉旅館で、入れ墨(タトゥー)を容認する動きが出ている。2020年の東京五輪・パラリンピックを控え、政府は入れ墨だけを理由に利用を拒むのは「不適切」との方針を打ち出した。ただ、反社会的なイメージが根強く対応に悩む施設もあり、どこまで広がるかは未知数だ。
吾妻連峰に囲まれた福島市の土湯(つちゆ)温泉。ホテル「山水荘」は昨夏、これまで断っていた入れ墨がある客に対し、館内に5カ所ある大浴場の利用を認めた。年々増え続ける外国人観光客に来てもらうためだ。
藤原誠主任は「海外からの旅行客の増加が見込まれる中、タトゥーを排除しても経営が苦しくなるだけ」と開放に踏みきった理由を語る。今のところ他の客からの苦情はなく、今後は「入れ墨可」と掲示することも考えている。容認する以上、入れ墨の種類によって区別することはしない。
観光庁は16年3月、入れ墨がある外国人観光客への対応を一般社団法人「日本温泉協会」などに通知した。文書で「入れ墨をしていることのみをもって、入浴を拒否することは適切ではない」と明言。シールで覆う▽入浴時間を分ける▽貸し切り風呂を案内する――といった対応事例を紹介した。安倍政権も17年2月、入れ墨だけを理由に拒むことは難しいとの答弁書を閣議決定した。
そもそも、入れ墨は何を根拠に排除されてきたのか。公衆浴場法には伝染病患者などに関してはあるが、入れ墨についての規定はなく、日本温泉協会の担当者は「法的根拠は弱い。施設ごとの判断が慣習として定着してきた」と説明する。このため、公営の温泉施設では入れ墨を理由とした入浴拒否をしてこなかった経緯がある。大分県別府市では、入浴できる市営温泉などを紹介する外国人向けの冊子を改めて作り、周知に努めている。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル