長野県軽井沢町で2016年、走行中のスキーバスが転落し、大学生ら15人が死亡、26人が負傷した事故で、業務上過失致死傷の罪に問われたバス運行会社社長と運行管理者だった元社員の初公判が21日、長野地裁である。運転手(当時65)は事故で死亡しており、「運行会社」の過失を問えるかが公判の焦点となる。
事故は16年1月15日午前1時50分ごろ、同町内の国道18号で発生。バスは下り坂で時速96キロまで加速し、カーブを曲がりきれず崖下に転落。乗っていた41人全員が死傷した。
今年1月に在宅起訴されたのは、運行会社「イーエスピー」(東京都羽村市)の社長、高橋美作被告(60)と運行管理者だった元社員、荒井強被告(53)。起訴状などによると、荒井被告は、事故前月に雇用する前の面接時に、運転手から「大型バスの運転に不安がある」と聞きながら技量を把握せず、安全管理の義務を怠ったとされる。高橋被告は、この報告を荒井被告から受けながら、運転手に関する必要な指導監督を怠ったとされる。
この結果、技量不足だった運転手が大型バス特有のギアやブレーキを的確に操作できず、バスが制御不能になったと長野地検は認定。同社のずさんな安全管理が事故を招いたとし、両被告について事故の予見可能性や結果回避義務違反を立証する方針だ。運転手については、被疑者死亡のため不起訴処分とした。
捜査関係者によると、両被告は捜査段階で「事故が起きるとは思わなかった」と否認していたという。
企業の安全管理が問われた事故では、企業幹部の刑事罰には至らないケースが目立つ。107人の死者を出した05年のJR宝塚線脱線事故では、業務上過失致死傷罪に問われたJR西日本の歴代社長4人の無罪判決が確定。9人が死亡した12年の中央道笹子トンネル崩落事故では、中日本高速道路の元社長ら8人が業務上過失致死傷容疑で書類送検されたが、不起訴(嫌疑不十分)とされた。12年に群馬県の関越道でツアーバスが防音壁に衝突し、46人が死傷した事故では、事故における運行会社トップの過失は問われなかった。
今回の事故に関する捜査は長期化し、発生から起訴まで約5年を要した。事故発生の危険性を事前に予測しながら必要な措置を怠ったといえるかどうか。検察、弁護側双方の主張が注目される。
「なぜ歯止めをかけられなかったのか」公判を待つ遺族
「なぜ組織として歯止めをか…
【10/25まで】スタンダードコース(月額1,980円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル