東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)でテロ対策の不備が相次いだ問題で、原子力規制委員会は20日、東電に対する検査計画をとりまとめ、本格的な作業を始めた。26日から現地検査に入る予定で、終了まで1年程度かかるという。
検査では、福島第一原発事故後のコスト削減の取り組みが今回の不備に与えた影響や、一連の不備が柏崎刈羽固有の問題なのか、東電の全社的な問題なのかを明らかにする。東電が示した再発防止策の実施状況や効果も確認する。
この日の定例会で、更田豊志委員長は「東電本社が整えた報告書では現場の把握はできない。核物質防護のレベルを決めるのは現場。徹底的に現場の把握に努めてほしい」と、今後の検査に注文を付けた。
その現場では、核物質防護を軽視するような空気があったことが、東電が設置した有識者でつくる独立検証委員会の調査結果からわかっている。
検証委は東電社内約4千人にアンケートを実施。核物質防護について「ルールを守らなかったことがあるか」という質問に対し、柏崎刈羽の所員の37・6%が「少なくとも1回以上守らなかったことがある」と答えた。ほかの部署より12ポイント高く、検証委は「柏崎刈羽は、他の部署と比較して核物質防護に関する意識が乏しかった」と分析する。
核物質防護の担当部門について、「高い資質を持つ人は、再稼働に関係する部署に集中し、核物質防護部門の人材配置は不十分だった」「いわゆる窓際部門となっており、リスペクトされていなかった」といった指摘もあった。
また、柏崎刈羽の所員の27・0%は「正直に物が言えない風土があった」と回答していた。「自らや部署の業務に負荷がかかる」「上司が真摯(しんし)に応じてくれず、言っても意味がない」といった理由を挙げる人が多かった。
一方で、東電社内全体でも同程度の割合の人が「正直に物が言えない」と回答。東電が問題を起こすたびに原因に挙げられる社内の風通しの悪さが、なお根強いことを示している。(藤波優)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル