北村玲奈
スナックや居酒屋が立ち並ぶ福井市の繁華街・片町。「ママがお迎えに来る前に寝ようね」。ビルの一室で、保育スタッフの山内千春さん(48)が、子供たちの背中をさする。夜に働くシングルマザーの子を預かる夜間託児所「ぷりベビ」だ。
コロナ禍は、私たちが直面する現実を浮き彫りにし、置き去りにされた課題を可視化しました。31日の衆院選投票日、人々は何を託そうとしているのでしょうか。私たちの現在地を写真でお伝えします。
託児所を運営する柿木有紀さん(52)は40歳の時に離婚。昼はネイルサロン、夜はバー。空いた時間に化粧品販売やホテルの清掃など、仕事をいくつも掛け持ちして働き、3人の子供を育ててきた。似た境遇の母親たちの力になりたいと資金を募り、今年6月にこの託児所を開設した。「深夜のベビーシッターは高い。彼女たちが安心して働ける環境整備が必要です」。
2019年の国民生活基礎調査によると、母子家庭世帯が働いて得た所得は平均231万円。児童のいる世帯の686万円のわずか3分の1だ。昼は非正規の仕事で働く人が多く、生活のためにダブルワークをする母親も珍しくない。そのため柿木さんは、託児所の料金を1時間500円以下におさえ、支援者の寄付でなんとか営業を続ける。
柿木さんはこれまで、一人でも多くの苦しい状況にいる母子家庭に手をさしのべたいと、お米の無料配布や子供用品のフリーマーケットなどを開いてきた。「コロナ禍で失業した母親から『休校で家にいる子供のご飯が買えない』と泣きながら電話がきたこともある。昼夜働く母親は、自治体の支援や国の補助金の情報を探す時間がない。孤立させない支援が必要だ」と訴える。(北村玲奈)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル