妻とは、いつものように一つの布団で一緒に寝ていた。その妻を殺害したとして殺人罪に問われた83歳の無職の男は、「妻を殺した」と110番した後、警察の取り調べに「なぜ首を絞めたのかわからない」と答えた。法廷で殺害の動機を探ろうとする検察側、弁護側の問いに、男が絞り出した言葉とは――。
9月14日。耳に補聴器をつけ、灰色のジャージー姿で現れた被告の男が、大阪地裁堺支部の法廷の証言台に立った。
起訴状の読み上げが終わり、裁判長が被告に問いかけた。
裁判長「どこか違うところはありますか?」
被告「はっきりとわかりませんが、間違いないと思います」
裁判長「どこが気になっている?」
被告「どう説明したらいいのか分かりかねます」
弁護側は、被告が今年3月、大阪府泉南市の自宅で、妻(当時76)の首をタオルで絞めて窒息死させたという起訴内容に、争いはないと答えた。
夫婦に起きた変化
事件に至るまでに、いったい何があったのか。
検察側の冒頭陳述や被告の供述調書などによると、妻とは、勤めていた自動車会社で出会い結婚。仕事が終わればすぐに家に帰り、ほぼ毎日一緒に食事をとり、一つの布団で寝ていた。定年後に泉南市に移り住み、時には手をつないで2人で散歩するなど、仲むつまじく暮らしていたという。
そんな夫婦に変化が起きたの…
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きょうも傍聴席にいます。
事件は世相を映します。傍聴席から「今」を見つめます。2017年9月~20年11月に配信された30本を収録した単行本「ひとりぼっちが怖かった」(幻冬舎)が刊行されました。[記事一覧へ]
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル