今月15日夜。舞台劇が上演された大阪市立芸術創造館を訪ねた。
大阪で新型コロナの緊急事態宣言が解除されて約2週間が経過していたが、主催者の意向で座席数は約7割におさえた。訪れた約25人の観客は、マスクを着用し、要請に従って一席ずつ空けて着席した。上演前には出演者が舞台に立ち、「息苦しいかもしれませんが、マスクの着用をお願いします。皆様のご協力で演劇という文化が成り立っています」と呼びかけた。
コロナ禍のいま
コロナ禍を経て、観光や保育、畜産、町工場といった現場がどう変わり、何を望むのか。大阪のいまを取材した。
「個人の尊厳、創造性、自主性が尊重されなくなるのではないかと危惧している」
今年5月下旬、17の劇団、13名の個人で構成するNPO法人「大阪現代舞台芸術協会」(大阪市)はホームページでこう訴えた。
このころ、大阪では府が確保する重症病床の使用率は80%を超え、府は音楽や演劇などのイベントについて、無観客での開催を要請していた。協会は危機的な医療体制に理解を示しつつも、「(無観客開催の要請の)根拠を十分に説明する責任がある」として、無観客開催の再考を求める要望書を府と市に提出した。
協会理事長の小原延之さん(53)は「客観的な根拠というよりも、政治的なムードでその時々の政策が決められたという思いが強い」と説明する。
小原さんによると、脚本や演出、ワークショップの講師など、演劇に関わる職業を生業にしているのは大阪ではほんの一握り。他の仕事をしながら演劇に携わっている人が大多数を占める。特にコロナ禍でダメージを受けたのが大学や養成機関を経て、小劇場で活動する若者だ。公演の先行きが見えないなか、1年以上演劇活動を中止した若手劇団も相次いだという。
政治に求めるものは、と尋ねると、小原さんは「演劇の上演で、お客さんにどう潤いを与えるのかという部分は数値化できないし、見えない。その見えない部分に政治家は想像力を働かせてほしい。政治家に最も足りていないのは、そこだと思う」と答えた。
コロナの影響は、演劇だけにとどまりませんでした。音楽公演を行う楽団関係者の思いを紹介します。
コロナの影響は舞台だけでは…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル