7万人超の学生を抱える日本大学で、田中英寿理事長(74)の側近らが大学に計約4億2千万円の損害を与えたという背任容疑で2回逮捕され、勾留が続いている。不正が行われた疑いがある時期に、田中氏側に現金6千万円が渡った疑惑も浮上。しかし事件に対するトップの説明はないままで、専門家らからは構造的なガバナンス(統治)改革や体制の見直しを求める声が上がっている。
学校法人・日本大学は16学部87学科、大学院19研究科のほか、16の付属中高や四つの系列病院などを傘下に持つ。企業の売上高にあたる事業活動収入は約2044億円(昨年度)で、東証1部上場の森永製菓やアース製薬を上回る。
そんな巨大組織のトップを13年間務めるのが田中氏で、逮捕された元理事の井ノ口忠男容疑者(64)は側近だった。
大学出資会社の不祥事、他の大学でも
事件の舞台となったのは日大が全額出資する株式会社「日本大学事業部」。取締役だった井ノ口容疑者は、付属病院の建て替えに伴う設計業者選定や医療機器の調達などを担う過程で、個人的な利益を図って計約4億2千万円の損害を大学に与えたとして東京地検特捜部に逮捕された。一緒に逮捕された医療法人の前理事長は、田中氏側に現金計6千万円を渡したなどとも供述している。
こうした大学出資会社は早稲田や青山学院など多くの私大が導入している。物品調達などを一元化し、生まれた利益を非課税の寄付の形で大学に還元するのが一般的な仕組みだ。日大事業部は昨年度、大学に8億5千万円を寄付した。
不祥事は日大以外でも起きている。同志社大では出資会社「同志社エンタープライズ」が無許可のままキャンパスのごみを収集していた問題が発覚し、委託した大学の幹部が2016年に逮捕、略式起訴された。
誰も質問しない日大理事会
日大では、事業部のブラックボックス化と、業務を承認する理事会の形骸化が深刻だったと評する関係者も多い。
「理事会では事業部の案件に…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル