新屋絵理
新型コロナウイルスに感染したまま退院する患者がいる――。そんなデマを入院先の男性医師にLINEで流されて拡散を呼びかけられたとして、元患者の40代女性が、医師と病院側に330万円の賠償支払いを求める訴訟を起こした。医師は発信内容の誤りを認め、「医療従事者として不適切だった」と謝罪しているという。
女性が入院していたのは、鹿児島県徳之島町にある「徳之島徳洲会病院」。
訴えなどによると、同病院の医師は今年5月、「うちの患者が飲酒行為などをしたため保健所から強制退院の指示が出て、陽性のまま退院します。拡散してください」とのメッセージを、知人らが参加するLINEグループに送信。女性の実名や年齢、勤務先なども記された内容が実際に広まったという。
メッセージを送った理由として「個人情報より人の命が大事なので拡散してください」とも書き込んだという。
「コロナのやつを雇うな」 職場に電話も
しかし陽性のまま退院する事実はなく、女性は「人口約2万人の島で『村八分』も予想され精神的苦痛は甚大だ」と鹿児島地裁名瀬支部に訴訟を提起。LINEで発信された後、勤務先に「コロナのやつを雇うな」「やめさせろ」などの電話が続き、仕事を約1カ月休んだと訴えている。また、女性の夫も1カ月自宅待機となり、小学生の息子は同級生から「母親は非常識」と揶揄(やゆ)されたという。
病院側は取材に「係争中のためコメントは控える」としている。(新屋絵理)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル