加治隼人
暴力団組長と密接な交際をしていたと認定した福岡県警の調査や、公共工事から排除した県や福岡市の決定は違法だとして、大分県に本社を置いていた管工事会社「九設」の社長だった男性(51)が今月、決定の取り消しや損害賠償を求めて福岡地裁に提訴した。九設は暴力団と関係がある企業として公表され、2週間後に倒産。男性は「相手が暴力団組長とは知らなかった」と訴えている。
排除通報は福岡県暴力団排除条例に基づき、役員らが暴力団と「密接な交際、または、社会的に非難される関係」を持つなどと認定された業者を公共工事から排除する制度。暴力団が不当な利益を得ることを防ぐ狙いがある。交際実態は県警が調べ、認定した場合に企業名や所在地、代表者名などを公表。自治体はこれを踏まえて入札への指名停止や排除の期間を決める。
福岡県によると「密接な交際」には、会食や旅行といった交遊を共にする行為が該当し、「社会的に非難される関係」には、主催する会合に組員らを招待する場合などが含まれるという。
九設は従業員約70人の地場大手とされ、売り上げは年50億円規模あった。しかし4月27日、社長だった男性が指定暴力団・道仁会系組長と密接な関係にあると認定され、福岡県警が「暴力団関係企業」として公表。県などから公共工事からの排除措置を受けた。銀行に口座を凍結され、取引先からも取引中止が相次いだ。経営が行き詰まり、5月10日に破産を申し立てた。倒産時の負債総額は約30億円だった。
提訴は今月10日付。訴状などによると、男性と密接な交際があったと認定された組長は「クラブのオーナー」を名乗り、建設業経営者ら約10人による「異業種交流会」に参加する1人だった。組長の店には暴力団立ち入り禁止の標章も貼られており、男性は「暴力団と全く認識していなかった」と主張。県警の聴取の際にも弁明したが、警察官から長時間の取り調べを受けて「認めないなら重い処罰になる」と言われ、「暴力団員と知っていた」と虚偽の自白をした、と訴えている。交流会に参加していた他の6人の企業も排除措置などを受けた。
男性は朝日新聞の取材に「認定後は異議を申し立てる機会もなかった。県や市も調査もせず公共工事からの排除を決め、納得がいかない」と話した。
県警は、男性と組長との定期的な飲食や、SNSでの連絡、組長が関わる店の利用などを確認した、と説明。県の担当者は「訴状が届いておらずコメントできない」と話している。(加治隼人)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル