日本最西端の離島・与那国島(沖縄県与那国町)に自衛隊が根を下ろして5年。島内を二分した誘致論争を経て自衛隊との「共生」を選んだ島は、がらりと景色を変えた。島を支えるインフラや地域活動に自衛隊員はなくてはならない存在になる一方、異論や不安を口にするのも難しい空気が覆う。10月半ば、東西11キロの島を記者が歩いた。
沖縄本島から南西へ510キロ。1日1往復の直行便から滑走路に降り立つと、湿気を含んだ空気が肌にまとわりついた。
周囲27キロ。人口1700人が暮らす島で早速、レンタカーを走らせた。赤い土壌が広がる島内では、サトウキビ畑と牧草地が目に飛び込む。主に農漁業が島民の暮らしを支える。
島に根付く自衛隊 島民の印象は?
初めに向かったのは、島内3集落のうち役場や唯一の診療所がある島東部の祖納(そない)地区。海沿いでダイビングショップを営む真謝(まじゃ)正太朗さん(35)に声をかけた。自衛隊の印象は――。
「迷彩色の車が島中を走るイメージがありましたが全く違いました」。島を頻繁に通過する台風に率先して対応する自衛隊員に親近感を覚えた。今では海中のゴミ拾いに一緒に取り組むなど交流を深める。
駐屯地の新設で、隊員やその家族約200人が島に移り住んだ。人口減少に直面していた島には、目に見える「効果」もあった。
祖納地区を東に進むと、島内3小学校で最も大きい与那国小学校が見えてきた。全児童69人のうち隊員の子は9人。昼休みになると、子どもたちが中庭で走り回っていた。
子どもが年々減る島で小学校は2014、15年度に複式学級になった。だが、16年3月に駐屯地が発足すると隊員の家族が移住し、複式学級は解消された。島袋篤校長(54)は「1学年1学級の方が落ち着いて授業ができる。子どもにとっても望ましい教育環境です」と話す。
集落の催事や清掃活動にも積極的に参加する隊員は、高齢化が進む地域社会にとっても欠かせない存在になりつつある。
消える「自衛隊反対」の看板 口に出せない不安や本音
島民の暮らしに自衛隊が浸透…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル