土井恵里奈
激動の15分だ。11月22日の朝ドラ「カムカムエヴリバディ」は、最愛の人との別れと出会いを描く。
この日の放送では、冒頭から悲しいシーンとなる。主人公安子(上白石萌音)の夫稔(松村北斗)が、ついに出征してしまう。妊娠が分かったのは、出征から二月(ふたつき)のことだった。
戦争が人々の暮らしをゆがめる中、ついに、待ち望んでいたその日が訪れる。1944年9月14日。安子と稔の長女が産声を上げた。このドラマの2代目主人公の誕生で、「るい」と名付けられる。
戦時中に、珍しい名前を付けたのは稔だった。由来は、安子との思い出の一曲、ルイ・アームストロングの「On the Sunny Side of the Street」。心配事は玄関に置いて日の当たる道を歩き出せば人生は輝く、という曲に、稔は将来への希望を抱く。
口に出せぬ願いを名に
早く戦争が終わり、どこの国の音楽でも自由に聴ける、自分たちの子どもにはそんな世界を、日なたの道を歩いてほしい――。
戦下では口に出せない願いを、稔は我が子に託した。安子はそれを誰にも明かさず胸にしまう。思い出の英語の曲さえ、もう気軽に口ずさめない時代になってしまったから。聴かれてはいけない子守歌を歌いながら、夫の帰りを待つ日々が始まった。
今週の物語の時代設定は、1943~45年。戦争、別れ、育まれてゆく命。重いテーマと向き合う1週間になりそうだ。(土井恵里奈)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル