埼玉県川口市立中学校で元男子生徒(19)が不登校になったのは、学校や市教育委員会の対応が不適切だったからだとして、市に550万円の慰謝料などを求めた訴訟の判決が15日、さいたま地裁(岡部純子裁判長)であった。認められた慰謝料などは55万円だったが、元生徒側の主な主張は認められ、市教委側に厳しい内容になった。(堤恭太)
いじめ防止対策推進法や市の方針では、いじめが発生したら「重大事態」として調査に入ることを求めている。だが、市教委は同校教諭らの聴取から「いじめはなかった」と判断。調査が遅れたことに裁量の逸脱や乱用はないと主張した。
判決は、元生徒の母親からの連絡や教諭らの報告でいじめは把握できたとして「重大事態の発生を認知すべきときに認知しない裁量があるとは解せない」と結論づけた。
不登校の一部について市教委は、元生徒の母親の森田志歩さんに問題があったと主張した。岡部裁判長は、校長らの「いじめはなかった」との発言で事態の早期沈静化が妨げられ、問題が長期・複雑化して不登校になったとし、市教委側の主張を退けた。
元生徒は2015年の入学後、サッカー部でいじめを受け、中2の5月に、不登校になった。復帰したが部の顧問から体罰を受け、9月から翌春まで再び不登校になり、自傷行為もした。母親はいじめ防止法の重大事態にあたるとして、学校側に第三者委員会での調査などを求めたが、状況は改善されず、その後も断続的に不登校になった。
市教委は、サッカー部の顧問教諭が元生徒の頭をたたいた行為などを体罰として処分したが、裁判では一転して「身体的接触による励まし」と主張。元生徒がその行為を喜んでいたとも述べた。しかし、判決では法廷での顧問教諭の再現や証言などから「有形力を行使した」「喜ぶとはかんがえにくい」として体罰と認定した。
また元生徒の自傷行為についても市教委は存在を否定したが、主治医への受診時の様子から自傷行為があったと認めた。
「まず息子に謝って」会見で母親、市教委に
判決言い渡し後、元生徒の母…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル