時津剛
師走の街に色とりどりのイルミネーションがともる中、ネオンサイン(以下、ネオン)ばかりを集めた写真集「NEON NEON」(LITTLE MAN BOOKS)が21日、出版される。
東京を中心に神奈川、埼玉、千葉、静岡で撮影された飲食店などのネオンの写真354点と、ネオン管製作会社や職人、現代美術家など関係者のインタビューを収録。計608ページというボリュームで、さながらネオンの「ガイドブック」のようだ。色鮮やかな写真の連続に目を奪われるが、ネオンを掲げた建築物をやや引いた視点から撮影しており、都市論としても読めるドキュメンタリーになっている。
撮影したのは都内在住の写真家、中村治さん(50)。2019年末から撮影を開始したが、期せずしてコロナ禍に。緊急事態宣言の発出と解除が繰り返される中、再びともり始めたネオンを丹念に写真に収めた。「ネオンがある店舗を事前に調べて撮影に向かうのですが、廃業している店も多かった。撤去されたネオンの熱が残した壁の痕跡を見つけた時は胸が痛みました」
タイトルの「NEON NEON」には、「消えゆくネオン」と「新たなネオン」のふたつの意味を込めた。中村さんによると、15年ほど前から安価なLEDが普及したことでネオン管の需要は急速に減ったが、ここ数年の韓国でのネオンブームの影響を受け、日本でも再評価の動きがあるという。
「東日本大震災後は、電力不足を背景にネオンへの風当たりが強くなり、コロナ禍では『夜の街』、いわゆるネオン街が批判されました。逆風が吹くこともありますが、夜の街の灯には享楽や悲哀、夢や欲望など人の思いや時代が写っていると思う。写真集からそれぞれの記憶を引き出し、『今』という時代を考えるきっかけになれば」と中村さん。同名の写真展を「Nine Gallery」(東京都港区北青山2―10―22)で21日から26日まで開催する。(時津剛)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル