大阪府と大阪市は7日、誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート(IR)の計画案をめぐって、住民を対象にした初の説明会を開いた。予定地の人工島・夢洲(大阪市此花区)は、液状化対策などに市が約790億円を負担する必要があることが明らかになっており、参加者からは「790億円のリスクをどう考えるか」といった質問も出た。
府と市は昨年末、2029年秋~冬を開業時期とする区域整備計画案を策定。初期投資額は1兆800億円で、事業者に選ばれた米MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスを中心に、パナソニックやサントリー、JR西日本など20社が出資に加わる。年間1兆1400億円の経済波及効果を見込む。
この日、大阪市内で開かれた説明会には約80人が参加した。府と市の共同部署IR推進局の職員が区域整備計画案の概要を説明し、市民からの質問に答えた。
参加者が「土壌改良の790億円のリスクをどう考えるか」とただしたのに対し、府・市側は「土地の所有者の責任に加え、国際観光拠点など政策的観点も踏まえ、市が負担する。港営事業会計の収支見込みを算出し、資金不足は生じない」と答えた。
別の参加者からの「支出の市民合意がない」との意見には、「議会にはかり、審議をお願いする」と理解を求めた。
ギャンブル依存症についての質問には、府・市側が「しっかり対策すれば、カジノ設置で依存症が増えることは一定抑制できる」と回答。これに対して「増えることは認めるということか」と追加の質問が上がる場面もあった。府・市側は「見解を申し上げる立場にない」としつつ、シンガポールのIRを例に「国を挙げて対策することで、オープン後に依存症の割合は減っているというデータもある」と答えた。
ほかにも「観光需要が回復しない場合のリスクはどの程度か」「パブリックコメント実施についてもっと広く知らせてほしい」といった発言があった。
一方で、賛成する立場の参加者から「事業効果をもっと説明すべきだ」との意見もあった。質疑応答は9人が発言したところで、40分ほどで打ち切られた。
府と市の市民向け説明会は2月14日までに計11回開催される。このほか、住民らが区域整備計画案に意見を述べる公聴会も今月23~29日に計4回予定されている。IRは長崎県と和歌山県も誘致を目指しているが、いずれも公聴会などの予定は決まっていないという。(浅沼愛、箱谷真司、西岡矩毅)
和歌山県が誘致を進めるカジノを含む統合型リゾート(IR)について、建設予定地・和歌山市の市民団体が7日、尾花正啓市長に住民投票条例の制定を直接請求した。市長は今月下旬までに市議会を招集し、条例案を提出する。
市民団体は「カジノ誘致の是非を問う和歌山市民の会」。直接請求に必要な署名数6162筆(有権者の50分の1)の3倍以上となる約2万筆を集め、昨年12月に市選挙管理委員会に提出した。市選管が2万39筆を有効と確定したのを受け、同団体が直接請求した。
地方自治法に基づき、市長は20日以内に市議会を招集し、自らの意見を付けて条例案を提出する。県はIR事業の整備計画を4月28日までに国に提出する予定だが、和歌山市の同意を得る必要がある。仮に住民投票が実施されれば、計画に影響を与えることになる。請求代表者の島久美子さんは「市議のみなさんに深く受け止めていただき、判断してもらいたい」と話した。
県議会の特別委員会では、資金調達などについて、県や運営事業者の説明に不透明な部分が多いとして批判が相次いだ。県は昨年11月から予定していた県民への説明会やパブリックコメントの募集を延期している。県は今月中にIR運営を担う特別目的会社(SPC)の構成や資金調達について説明するとしている。
一方、県内の経済団体はIRに期待を寄せている。県内五つの経済団体が集まった6日の会合で、勝本僖一・県商工会議所連合会長は「雇用も含めて計り知れない経済効果が期待される。IRの実現を強く願う」と話した。(西岡矩毅)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル