窓辺に置かれたCDプレーヤーから、ポップで楽しげなメロディーが流れてくる。
奥多摩トイレット、ナンバーワン イン・ジャパ~ン イン・ジャパ~ン
JR青梅線の終点・奥多摩駅前の観光用公衆トイレ。大井朋幸さん(47)の1日はここから、このテーマソングとともに始まる。
曲名は「OPT(オピト)」。「オクタマ・ピカピカ・トイレ」の頭文字で、「日本一観光用公衆トイレがきれいな町」を掲げる東京都奥多摩町で、その使命を担うプロ集団の名称でもある。メンバー4人のリーダーが大井さんだ。
磨くのに機械やブラシは使わない。床にはいつくばり、スポンジでタイルの溝に入った汚れまで丁寧に落とす。便器も手鏡で内側まで確認しながら念入りに。薄いグローブをはめた手で直接磨くと、キュッキュという摩擦音が心地いい。尿石などの汚れが少しでもあると、この音は出ない。
清掃員になったのは2017年春。長年調理の仕事に携わり、前年までは入浴施設の支配人だったが、体調を崩して退職した。新たな職を探す中で、町の第三セクター「奥多摩総合開発」が職員を募集していると知った。
仕事がトイレ掃除だと知ったのは入社後だ。町内のトイレは当時どこも汚かった。
防塵(ぼうじん)マスクにゴーグルをつけ、鼻の穴に塗り薬を詰めて作業に臨む日々。それでも襲いかかるアンモニア臭に吐き気がし、涙が出た。食欲もわかず、半年足らずで5キロやせた。
転機は同年の夏。小学2年生…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル