高知市と松山市の小中学校PTA連合会(市P連)が、上部団体にあたる県PTA連合会(県P連)からの脱退を決めた。PTA活動を束ねる「大きなPTA」を巡る異例の事態。何があったのか。
「令和4年3月31日付をもって貴高知県小中学校PTA連合会を退会いたします」。昨年12月下旬、高知市P連は、こんな文面の退会届を県P連に提出した。
市P連は、県P連に加盟する県内7地区の連合会の一つだが、市内59校が加盟する大所帯で、県内の公立小中学校の児童生徒約4万3500人のうち、半数近い約2万800人の保護者が県P連から抜けることを意味する。
きっかけは、分担金の増額だった。市P連の松本憲誠会長によると、県P連に納める分担金は子ども1人につき年間80円。だが、今後は子どもの数が年々減少し、資金難になるという見通しから、今年度の県P連の総会で20円の増額が決まった。
市P連は増額に反対の立場をとってきた。原資は市内各校のPTAに保護者が支払う会費の一部。将来、さらに増額も必要とする県P連の試算に対し、現状でも先延ばしできるはずだと見解が分かれた。
総会直後の昨年6月、市P連は常任委員会を開き、参加した各校PTAの代表者らで、増額についての対応を話し合うことにした。
この時点で「脱退という選択肢は頭になかった」(松本会長)。ところが、参加者から意外な質問が飛びだした。「県P連はそもそもどういう組織なのか」「入っているメリットは何なのか」。その後の委員会でも脱退の是非がテーマとなり、疑問が続出した。
市P連によると、県P連主催の講演会には、市P連が参加費を負担すると呼びかけても保護者の参加はほとんどない。昨年のある研究大会では、市P連から運営スタッフとして出向いた1人が講演も聞き、参加者ゼロを免れたという。
脱退の動きを察した県P連は「他地区、他県とのネットワークが切れる」「国に対し日P(日本PTA全国協議会)を通しての意見提言ができない」など、脱退のデメリットを10項目以上にまとめたリストを示して説得を試みた。だが、市P連は、昨年12月に臨時総会を開き、賛成多数で脱退を正式に決めた。
県P連の仲村貴介会長は「PTAの団体にはそれぞれの役割があり、県行政への働きかけや7地区の連絡役という県P連の役割をもっと利用してほしかった」と話す。
一方、松本会長は「明日は我が身」と気を引き締める。「市P連も魅力ある活動をしなければ、各校のPTAから脱退される側になる。自分たちの活動が保護者にどのように映っているのかを意識し、運営・企画を見直していきたい」
■県P連「相互にカバー」…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル