阿部峻介
東京電力福島第一原発事故で避難した住民らが東電に賠償を求めた3件の集団訴訟で、最高裁第三小法廷(林道晴裁判長)は東電と原告の上告を退けた。計約600人に国の基準を超す総額約11億円を払うよう命じた二審判決が確定した。7日付の決定。同種の集団訴訟は約30件あり、東電の賠償が最高裁で確定したのは今回で6件となった。
今回の決定で確定したのは、福島県の帰還困難区域などに住んでいた計約530人が「ふるさと喪失」を訴えて福島地裁いわき支部と東京地裁に起こした訴訟と、福島市など自主避難の対象区域の約50人が放射線被害の不安を訴えて福島地裁に起こした訴訟。
いわき訴訟の二審・仙台高裁は、「ふるさと喪失」の慰謝料などとして、原子力損害賠償法にもとづく賠償の基準「中間指針」を1人120万~250万円上回る賠償を認定。東京訴訟の二審・東京高裁も110万円の上積みを認めた。福島訴訟の二審・仙台高裁は、1人8万円という中間指針を上回る30万円の賠償が妥当と判断した。
東電は3訴訟とも「すでに十分に賠償した」と上告し、一審より賠償額を減らした東京訴訟については原告側も上告していた。
決定後に都内で会見した福島訴訟の原告側代理人の弁護士は、勝訴が確定したことについて「爆発的な喜びはなく労力と年月をかけてようやくここに来たのかと、ほっとしたのが正直なところ。中間指針は見直されるべきだ」と訴えた。
東電は「福島への責任を果たすべく、誠実に対応する」などとコメントした。
先に東電の賠償責任が確定した3件の訴訟で争われた国の賠償責任については、第二小法廷が今夏までに統一判断を示す見通し。(阿部峻介)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル