21世紀に、司法はどうあるべきか――。この根源的な問いに対し、有識者からなる司法制度改革審議会は2001年6月に意見書を公表した。「国民の社会生活上の医師」として、大幅に数が増えた法曹(弁護士、裁判官、検察官)が様々な分野で活躍する姿を描いた。その成否を握る存在として位置づけられたのが、「法科大学院」だった。
法的な知識や思考力はもちろん、豊かな人間性を養うため、合格率3%前後だった司法試験による「一発勝負」からの脱却を目指し、真摯(しんし)に学んだ学生の7~8割が合格できる「プロセス重視」に転換を図るのがねらいだった。
それから20年。法科大学院の半数以上が撤退・募集停止に追い込まれるなど、理想の姿は崩れつつある。司法制度改革を問う連載「テミスの審判」第2部は、法科大学院構想に関わったキーパーソンの証言から、その過程を追う。
ギリシャ神話の女神「テミス」は両手にてんびんと剣を持つ。司法の公正さと正義を表す象徴だ。
「原点にあったのは、東京大学法学部の5年制案でした」
有識者らからなる司法制度改革審議会の会長として、法科大学院構想を牽引(けんいん)した京大名誉教授(憲法)の佐藤幸治(84)は、こう述懐する。この言葉を理解するには、時計の針を1960年代半ばに戻さねばならない。
医学部が6年かけて医師を育てているのだから、法律のプロを育てるのに、もっと時間をかけていい――。こんな発想を根底に、このころ東大法学部で議論されていたのが「5年制案」だった。
改革への熱意、そしてブレーキ
ちょうど、戦後の新制大学が…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル