甲府市で昨年10月、全焼した住宅の焼け跡から夫婦の遺体が見つかった事件で、甲府家裁は4日、殺人と現住建造物等放火などの非行内容で送致されていた無職少年(19)について、「残虐さを極めている」などとして検察官送致(逆送)と決定した。甲府地検は起訴するか10日以内に判断する。
決定などによると、少年は昨年10月12日午前3時半ごろ、甲府市蓬沢1丁目の会社員井上盛司さん(当時55)方で、井上さんと妻の章恵さん(同50)を果物ナイフで突き刺すなどして殺害し、井上さん宅に火をつけて全焼させたなどとされる。
家裁は決定の中で、夫婦の長女に対する逆恨みから一家全員か、長女を除く家族の殺害を企てたと指摘。一方、審判で動機や目的を自ら語ろうとせず、反省や謝罪がみられないとして、刑事処分以外の措置を相当と認める事情はないとした。残虐さを指摘のうえ、「責任は重大」とした。
捜査関係者によると、少年は逮捕後、同じ高校の後輩だった長女への一方的な好意がかなわず、「家族全員を殺そうと思った」と供述していたとされる。
地検は、事件当時の責任能力を調べるため、昨年12月から鑑定留置を実施。刑事責任能力があると判断したうえで、家裁に送致していた。家裁は観護措置を続けていた。
少年法は、少年時に犯した事件について実名や顔写真の報道を禁じ、警察や検察も匿名で広報してきた。改正少年法は引き続き、20歳未満を少年と位置づけている。ただ、民法が定める成人年齢の20歳から18歳への引き下げに合わせ、改正少年法は18、19歳を「特定少年」と規定。18、19歳時の事件で起訴されれば、実名報道を可能とする同法が4月に施行された。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル