夫の死を契機に書道を始め、子どもたちを教え続けて半世紀になる。「書くことが好きになって欲しい」。子どもがやる気になるのをじっくり待ちつつ、可能性を引き出していく時間が生きがいだ。
岡山県奈義町の住宅が点在する田園地域。平日の午後、木造家屋の書道教室に、学校帰りの小中学生らが続々と吸い込まれていく。
習い始めの号令は無い。おしゃべりしていた子どもたちが落ち着いて机に向かった頃合いを見計らい、上原婦じ江さん(96)はその日に練習をする文字を伝える。
「進」の文字を練習する女の子に、そっと声をかけた。「点はしっかり止めて」「しんにょうはもっと伸ばして」
書き終わると「ええのが書けたなぁ。うまくなった」と優しいまなざしを向けた。
戒名の中の文字に目が止まり
神戸市で生まれ、戦時中の1…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル