これまで、ひきこもりの人たちのそれぞれの事情が十分に分からないまま、就労一辺倒で進める支援は実を結ばなかった。
ただ、ひきこもり当事者や経験者の生の声を集めた「ひきこもり白書2021」(ひきこもりUX会議)では、現在就労していないひきこもり状態の人の6割は「働きたい」と答えていた。白書は「働きたくないのではなく、自分に合った働き方が見つけられないのではないか」と問題提起する。
東久留米市商工会(東京都)では、ひきこもり経験者の声を聞きながら、当事者が参加しやすい就労に挑戦している。
ひきこもり経験がある前田亮さん(38)に会うため、東久留米市の機械メーカー「ハイメックス」の工場を訪ねた。出迎えてくれた前田さんは週2回2時間ずつ、ここで機械部品の不要な突起物を取り除く「バリ取り」の仕事をしている。
前田さんは「焦らないで働ける環境が自分に合っている。勤務日が週2日というのも生活のリズムがついて充実している」と話し、表情は明るい。
30歳を過ぎたころ、2年間ひきこもった。中高時代は野球部で、仲間も多かった。だが、大学卒業後に就職した大手物流会社では納期に追い立てられた。その後転職した介護施設は夜勤と早朝勤務も多く、心が不調になり、自宅で療養することになった。
療養当初は服薬の影響で1日十数時間横になるしかない日も多かったという。筋肉がみるみる衰えたのもショックだった。
2年間の療養後に奮起して市の就労支援窓口を訪れ、ハローワークで紹介を受けた医療機関に障害者雇用で就職した。しかし、仕事内容は清掃から屋外での解体作業と多岐にわたった。
また、ブランクを経ての週4…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル