1人の彫刻家が、生涯をかけてひたむきにノミを振るった木彫りのマリア像が、完成しようとしている。神奈川県藤沢市にアトリエを構える親松(おやまつ)英治さん、88歳。島原の乱の犠牲者を慰霊しようと決意し、40年間、私財を投じて彫り続けた約10メートルの像はいよいよ、長崎へと向かう。
親松さんの長年の思いに心打たれた地元・南島原市の有志が専用施設を建設し、6月に迎え入れることを決めた。「誰の依頼を受けたわけでもなく始めたこの仕事が、最もふさわしい場所に迎えられることが決まり、運命を感じる」と親松さんは語る。
親松さんは新潟県佐渡市出身。高校卒業後、同郷の人間国宝のろう型鋳金作家・佐々木象堂氏に師事し、その後、木彫家の橋本朝秀氏の内弟子として腕を磨いた。1970年代に藤沢市に拠点を移し、2011年には日展の最高賞、内閣総理大臣賞を受賞している。
資金や助手も断り、寝る間を惜しんでノミを振るった
そんな親松さんが、巨大なマリア像の制作を決意したのは1981年。当時のローマ教皇、ヨハネ・パウロ2世が初来日し、長崎を訪れたときのことだ。
親松さんはカトリック信者で…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル