東京・神保町のランドマークである「三省堂書店神保町本店」が8日、一時閉店した。この場所で営業を始めて141年。午後8時23分、最後の客が退店し、いったん幕を下ろした。ビルは解体され、6月からは仮店舗で営業する。
多くの書店が集まる神保町で最も大きい同店は、141年間、同じ場所で営業し続けてきた。現在の社屋は4代目で、神田神保町1丁目1番地にあるランドマークとして知られてきた。
三省堂書店はコロナ禍による打撃を受け、同社によると、三省堂全体で2割の客が減った。本店が入る築41年のビルは設備の老朽化も進み、建て替えとともに一時閉店を決めたという。
この日、レジには本をまとめ買いする客たちが行列を作り、店員が「最後尾」のプラカードを掲げていた。店の前は、スマートフォンをかざして建物を写真におさめる人たちであふれた。
閉店後、店の前で亀井崇雄社長が感謝のあいさつを述べると、店の前に集まった数百人の客から拍手が送られ、「141年間ありがとう!」という声も上がった。
現在のビルは解体工事に入り、6月1日から少なくとも3年間、約300メートル離れた小川町の仮店舗で営業する。規模は現在の4分の1になる。
神保町に住み、高校3年生の娘(17)と最後の買い物に来ていた女性(47)は、「神保町と言えば三省堂。本当にぜいたくな本屋だった」と惜しんだ。娘が生まれてからここで買った児童書は100冊を下らないという。医療事務の仕事柄、この店で専門書を探しては、膨大な品ぞろえに助けられ、コロナ下でも知識を更新できたという。「戻ってくるのが待ち遠しい」と親子で口をそろえ、店を後にした。(田渕紫織)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル