今年の2月、ロシアがウクライナへの侵攻を開始した。いまだ終わりの見えぬ戦いの中、問題視されていることの一つに偽・誤情報の拡散がある。
日本語でもSNSを中心に様々な情報が広まっている。「ブチャの虐殺はウクライナ軍がやった」「ウクライナ政権は8年間ジェノサイド(集団殺害)をしており、女性や子供を含む数千人の命を奪った」。こうした情報を見た人は多いのではないだろうか。これらは元々は、ロシア政府や関連機関が意図的に流した偽・誤情報だ。
こういったことから、「SNSが戦争を情報戦争に変えた」と捉える向きもある。しかし、そもそも戦争時には昔から、情報というものが極めて大きな役割を担ってきたものだ。
SNSが普及する前も、主にマスメディアを使って様々なプロパガンダが流されてきた。実際に現在も、ロシアの主たるマスメディアでは、様々な真偽不明情報が流されている。日本のメディアの中には、ロシアのマスメディアの情報を信じ、結果として誤報を出してしまったケースもある。
世界中でSNSが普及したこの人類総メディア時代に起きた新しい現象とは、プロパガンダを戦略的に流すメディアとして、SNSという新たな選択肢が増えたことである。いまや政府は、マスメディアとSNSを同時かつ相互補完的に活用することで、マスメディアだけに頼っていた頃よりはるかに広く、ハイスピードで、プロパガンダを広めることができる。
実際、ロシアはマスメディアとSNSを駆使して、多言語でプロパガンダ発信を続けている。その結果、偽・誤情報が特に西側諸国以外のアジアやアフリカなどで急速に広まっていることが、英エコノミスト誌によって指摘されている。
さらに残念なことに、人は偽・誤情報を広めるのが大好きなようだ。
筆者の研究チームは今年、5…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル