東京・浅草の雷門からほど近い、ビルの一室。照明を半分以下に落とした薄暗い部屋で、「Sakura Photo Studio」代表の寺内寛さん(43)はため息をついた。「限界です。あと2カ月もつかどうか」
浅草には和服のレンタル業者が多いが、同スタジオでは外国人観光客を専門的に受け入れてきた。だが、この2年あまり、2週間で客がゼロという時もある。
外国人観光客に日本を知ってもらう接点になりたい。そんな思いで12年前、ヘアメイクや着付けをする仲間とともに、和服のレンタルと写真撮影の仕事を立ち上げた。英語、韓国語、中国語など5カ国語に対応。60人もの外国人がやって来る日もあったという。
髪をセットし、和服を着付け、足袋と草履をはいてもらう。女性なら髪飾りをつけ、和装に合うバッグも貸し出した。オプションで、スタジオでの写真撮影がある。雷門など外に出ての撮影希望にも対応した。
独身時代にスタジオを訪れた外国人客が、数年後に出産した子と一緒にやって来た――。そんなリピーターもいた。「和服で浅草を散策したことが日本旅行のハイライトでした」。帰国後に届く喜びの声が、生きがいだったという。
浅草がある台東区の統計では、2018年に同区を訪れた観光客5583万人のうち、約2割の953万人が外国人だった。
それがコロナ禍で暗転した…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル