2020年の熊本豪雨で被災した家屋の廃材を活用したコーヒーの移動販売車が、被災地を巡っている。コロナ禍で人と人とのつながりが薄れたことを憂えたビジネスマンと、民家の貴重な「古材」が災害ごみになることを悲しんだ被災者の思いがつながった。挽(ひ)きたての香りと味が被災者を癒やして回る。
車の名前は「移動焙煎(ばいせん)車」。サントリーホールディングスが手がける。5日に熊本県八代市坂本町でお披露目した後、8日に球磨村、9日に錦町、10日に人吉市と豪雨の被災地を巡り、無料でコーヒーを振る舞った。挽きたてのコーヒーに、被災者からは「うまかね」「ありがたか」と感謝の声が上がった。
きっかけは20年のコロナ禍だった。
デジタルマーケティング部(東京)に勤務する杉谷憲一さん(56)は、取引先の飲食店が打撃を受ける中、「単に売り上げが減っているだけでなく、良質なコミュニケーションが失われているのでは」と危機感を強めた。
同社が扱っている素材の中で、消費者に直接届けて喜ばれるものとして「コーヒー豆」を思いつき、焙煎機を備えた移動販売車を整備して、外に打って出た。
東京で1号車が順調に稼働しはじめた昨年、釣り好きの杉谷さんがたまたま訪れた八代市坂本町で、溝口隼平さん(40)に出会った。
球磨川の氾濫(はんらん)で…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル