8月22日、韓国の文在寅大統領が軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄することを決めたと発表しましたが、韓国が破棄することは、日本は織り込み済みだったと思います。
【全画像をみる】【日韓関係・佐藤優徹底解説】日本外交は短期的には勝利。だが、中長期では守勢に追い込まれる
2016年からGSOMIAによって両国間で情報交換が行われた回数は29回、そのうち韓国が日本から情報をもらった回数が極端に少ないという不満が韓国側にはありました。
そもそも元徴用工判決によって日韓間の信頼関係が崩れている今、軍事やインテリジェンスにおける情報共有もすでに機能しておらず、GSOMIAは事実上意味のないものになっていました。
売られたケンカを買っただけ
元徴用工判決に端を発した、韓国への半導体材料の輸出規制やホワイト国(輸出優遇国)からの除外といった日本政府の対応は当然です。外交姿勢としては正しいと言えるでしょう。日本政府としては厳しく出ざるを得ないのです。
もともと日韓基本条約と請求権協定で解決済みの話を、韓国はなぜ蒸し返して来たのか。国際関係で約束をしたことは守られなければいけません。日本からみれば、最初に約束を反故にしてケンカを売ってきたのは韓国だから、売られたケンカを買っただけということです。
輸出規制やホワイト国からの除外は、まさに政治的な報復なのです。
韓国がGSOMIAの破棄で気にしていたのは、日本でなくアメリカ。そのアメリカは、ポンペイオ米国務長官などトランプ政権の幹部が失望や懸念を表明しました。このことは韓国にとってショックだったのではないでしょうか。
そういう意味でも、日本外交は短期的にはケンカに勝ったと言えると思います。
日本人が気づかぬ韓国人の苛立ち
しかし、中長期的にはどうでしょうか。
日韓基本条約が締結された1965年当時の1人当たりのGDPは日本が700ドルに対し、韓国は100ドル。それが2018年には日本の3万9000ドルに対して韓国は3万1000ドルと拮抗しています。人口が日本の方が多いので、国全体のGDPは日本が2.5倍ですが。
日本を観光で訪れる人も増えたことで、日本人と自分たちの生活水準にそれほど差がないことに韓国の人は気づいています。
つまり韓国からみれば、自分たちは経済的にも日本と同等の国力があると感じている。問題はそれを日本人が理解していないことです。
もちろん韓国には深刻な国内の経済格差という問題が存在します。ですが、国民の中には、こんなに日本と対等になったにも関わらず、まだ自分たちは日本にナメられている、という集合的無意識が存在する。
かつては1人当たりのGDPでみても7倍もの差があった日本に追いつけと必死で努力して、今や追いつこうしているのに、日本はそう見ていない、という苛立ち。そしてその韓国国民の苛立ちに日本や日本人が鈍感すぎることに、さらに韓国人は苛立っているのです。
これは夫婦関係に例えるとわかりやすいと思います。かつで年収が随分下だった年下の配偶者が、経済力をつけたにも関わらずずっと見下されたように見られていたらどうか。離婚につながりますよね。
日韓関係を少しでも良好にしようと思えばまず、日本人がこの韓国人の苛立ちに気づき、理解しようとすることです。
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Source : 国内 – Yahoo!ニュース