◆米軍によって憲法で保障された人権も主権も侵害
オスプレイやジェット戦闘機など米軍機の所かまわぬ低空飛行訓練に象徴されるように、
米軍は日本全国で勝手放題な基地使用と軍事活動を続けている。
深刻な騒音被害や墜落事故などの危険をもたらしながら。
しかし、日本政府はそれを規制できない。
米軍の自由勝手な基地使用と軍事活動を認めている日米地位協定があるからだ。(吉田敏弘・アジアプレス)
日米地位協定。元もとは日米行政協定と呼ばれ、1952年4月に対日講和条約、日米安保条約とともに発効した。
1960年の日米安保改定に伴い日米地位協定と改称された。
全部で28条あり、日本における米軍と米軍人・軍属それらの家族の権利など法的地位を定めている。
米軍側には多くの特権が認められている。
たとえば次のように。
基地の場所を限定せず、日米合同委員会(後述)の密室協議により、国会を関与させずに基地の提供を決める「全土基地方式」。
基地の運営などに米軍が「必要なすべての措置」をとれる強力な排他的管理権。
基地で環境汚染などが起きても日本側当局は米軍の許可なしには立ち入れない。
基地返還の際の原状回復や保障の義務も負わない。
米軍は日本の出入国管理に服さず、基地などに自由に出入りできる。
米軍人・軍属の公務中の犯罪(過失致死傷など)の第1次裁判権は米軍側にある。
公務外では日本側に第1次裁判権があるが、事件・事故の被疑者の身柄が米軍側にあるときは、日本側が起訴するまでは身柄の引き渡しをしないなど、米軍側に有利な規定となっている。
米軍機墜落事故でも米軍が現場を封鎖し、日本側は現場検証も事情聴取もできない。
米軍は事故原因の究明は二の次で訓練飛行を再開し、日本政府は容認してばかりいる。
横田、厚木、嘉手納、普天間など米軍基地の周辺住民による米軍機騒音訴訟でも、米軍機の爆音が騒音公害の発生源で、その違法性が認められ、損害賠償も認められているのに、肝心の米軍機の夜間早朝の飛行差し止めは認められない。
米軍の活動に日本政府の規制は及ばないから、差し止めはできないというのが裁判所の判断である。
日本各地で続く米軍機の危険な低空飛行訓練も、野放しにされている。
米軍の基地使用や軍事活動に対し日本の行政権も、司法権も及ばないのが実態である。
米軍優位の不平等な日米地位協定によって、米軍に事実上の治外法権が認められているのだ。
米軍という外国軍隊により主権が侵害され、そして憲法で保障された人権も侵害されている。
このような状態で、はたして日本は真の独立国・主権国家といえるだろうか。(つづく)
*関連図書
『「日米合同委員会」の研究』謎の権力構造の正体に迫る(創元社)吉田敏浩 2016年
『横田空域』日米合同委員会でつくられた空の壁(角川新書)吉田敏浩 2019年
『日米戦争同盟』従米構造の真実と日米合同委員会(河出書房新社)吉田敏浩 2019年
Source : 国内 – Yahoo!ニュース