19、20日に能登半島を襲った複数回の地震は、石川県珠洲(すず)市の伝統工芸品「珠洲焼」にも深刻な被害をもたらしている。「幻の古陶」と呼ばれ、現在は約50人の作家がいるが、「作品が壊れた」などの被害報告が相次いでいるという。
同市若山町に拠点を構える珠洲焼作家、篠原敬さん(62)の自宅2階にある保管室には、つぼや茶わんなどの作品約300点が棚に並んでいた。だが、この2日間に発生した地震により、200点あまりが床に転げ落ちた。
「無事そうに見えても少しでも傷がついたら、もう商品にはならない。落ちたものは全部ダメです」と肩を落とす。被害総額は500万円を超える見込みだという。
珠洲焼は釉薬(ゆうやく)を使わずに高温で焼き上げる。黒灰色の輝きを放つのが特徴だ。平安時代末期から室町時代後期にかけて、珠洲市を中心に能登半島で生産された中世日本を代表する焼き物だ。だが、15世紀末に一度は廃絶。以降、「幻の古陶」と呼ばれていたが、約500年の時を経て、1979年に現代の珠洲焼が「復活」した。
珠洲出身の篠原さんが珠洲焼と出会ったのは30歳のころ。地元で開かれた企画展で「シンプルな立ち姿」に魅了された。以来、珠洲焼の世界に飛び込んだ。
現在は東京や大阪、名古屋などの百貨店やギャラリーで個展を開き、生計を立てる。今年も7月と9月に個展を予定しているが、作品の多くが破損した。「あるものでやるしかないですね」と苦笑いする。
篠原さんの場合は、11~4…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル