北海道斜里町の知床半島沖で観光船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没した事故で、地元で観光船業に携わる男性が朝日新聞の取材に応じ、事故当日まで3日連続で、出航をやめるよう船長に忠告していたと証言した。
男性の記憶では、そのやり取りが始まったのは4月21日のことだった。
「船を出したらダメだ」
男性は、知床遊覧船が運航するカズワンの豊田徳幸船長(54)にそう強く迫ったという。
カズワンにとって今季初めての出航が2日後に迫っていたが、当日は天候が悪化するとみられていた。
22日も沈没事故当日の23日も、男性は出航しないよう豊田氏に忠告した。
最後は声を荒らげるほどだった。しかし、豊田氏の反応は薄かったという。
「うちら漁師でも引き返してきたのに、出航するの?」
地元漁師の男性は23日朝、知床遊覧船の事務所前で会った豊田氏にそう伝えた。豊田氏は「お客さんもいるからね」と顔をしかめた。
男性は「これから波も出てくるから行かない方がいい。やめた方がいい」と食い下がる。
すると、豊田氏は「うーん」と考え込んだ後、「まあ、行けるところまで行ってみる」と答えた。
豊田氏はその後、軽トラックに乗り、カズワンの拠点であるウトロ漁港の方へと向かった。
それが最後に見た豊田氏の姿だった。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル